5セメスターのテストもいよいよ明日で終わりです.最近は惰性でテスト対策しているだけの優曇華院です.教科書を読んでいた頃の自分は何処かに行ってしまったようです.

タイトルに示した話をする前に,少しばかり身の上話をします.優曇華院は医学部に通っていますが,医者になるつもりは今の所ありません.「なぜそんな奴が医学部に入ったんだ」とよく訊かれます.少なくとも実際に医学部で医学教育が始まるまでは医師として他人を救う行為は尊いもので(今でもこの考えは持っていますが),当然ながら自分もその行為をするものだと思っていました.ですが,現在では「医学は事実の詰め込みだけで応用性が無いし,それを教える医学部とその構造はもっとクソ」などと不適切発言ばかりしています.いつからこう感じるようになってしまったのか,自分でも分かりません.医学部をやめて,他の学部に入った方が楽だろうと感じたこともありましたが,結局転学部することはなくここまで来ました.惰性といえば惰性なのかもしれませんが,もしかすると心の何処かでやはり医者という尊い職に何か惹かれる物があるのかもしれません.

医学部はおそらく,専門科目以外のことに割ける時間はかなり少ない方だと思います.その中で何をするかは人それぞれでしょう.例えば,研究をする人,音楽をする人,ともすると,過去にやった医学の復習をする人もいるかもしれません.優曇華院は,そのような時間で物理学をすることを選びました.高校生の頃から,物理は得意科目だったし,理論物理学にも興味がありました.

物理学の学び方

教科書の読み方

物理学は科学の中の一つです.科学は万人が共通の理解を得られるよう作られています.では,理解するためにはどうすればいいでしょうか.まずは当然,何かしらの書籍を読むことになります.物理の教科書は,数式が至る所にあり,非常に計算が煩雑だったりすることがあります.この時,よく言われるのが,「計算に夢中になるのではなく,しっかりと式の意味を吟味しろ.」仰る通りです.物理学における数学は,自然現象を記述するための言語であり,全ての数式は物理の文脈で意味を持っています.数式の意味を理解しようとせずに本を読めば,なんとなく計算が出来た,と言うだけで終わってしまうでしょう.では,ここで別の疑問が生じます:「式の意味を理解するのが重要なのであれば,途中の式変形は自分の手を動かさずにやってもいいのか?」これに関しては,YesでもありNoでもあると優曇華院は考えます.もし,純粋に物理学を趣味としてやるだけなら,計算過程をトレースする必要は無いでしょう.書かれた計算結果を見てその意味を考えることに時間を費やした方が有益です.しかしながら,もし,将来的に物理学に本格的に向かい合うのであれば,計算のトレースは必須と言えるでしょう.この操作は,本の理解には必須で無いかもしれませんが,自分で何か新しいことに応用したりするためには絶対に必要なスキルです.本を読むときに手を動かして計算しろ,と言うのは将来のための基礎訓練とも言えます.もちろん,自分で計算をすることによって理解が深まる,と言う側面もありますが.

数学との兼ね合い

さて,物理学は数学を言語とする訳ですから,数学の理解は必須です.では,物理学徒は一体,どこまで数学を理解すればいいのでしょうか?「物理学徒は数学者では無いので,数学に対しストイックになる必要は無いし,数学に割ける時間は限られているので,出来るだけ効率よく,最小限の努力で身に付けたい」と言った意見も多いでしょうし,優曇華院も昔はこう思っていました.しかしながら,やはり数学書を使って勉強することを推奨します.数学書は定義,定理,補題,証明,例のオンパレードで,抽象的なものも数多く存在し,読みこなすのはかなり骨が折れます.数学書を使って勉強した人と,何となくで数学を体感した人とでは,その理解に雲泥の差があるのは明白で,物理学の高度な分野をこなすには,曖昧な理解では全くもって太刀打ち出来ません.例えば,相対性理論の初歩はテンソルが何奴か分からなくても,添字の計算をしていれば理解は出来ますが,時空多様体の話などになってくると,数学に精通していなければ厳しいでしょう.また,数学の理解が甘ければ,物理の勉強の最中に,数学的な事項で足止めをくらってしまい,全体像を見失ってしまうことすらあるかもしれません.結局のところ,数学書を読んで「ドーピング」しておけば物理の理解に集中できると言う感じです.

精神論のようなもの

物理を勉強するにはもちろん.教科書を読み,記述言語である数学を理解することは必須です.では,それ以外に何がいるでしょうか?有名な話で,ヴェイユとセール(20世紀を代表する数学者)が日本にやって来た時,中禅寺湖で突然寒中水泳を始め,最後に「数学は体力だよ」と言ったそうです.研究者レベルになろうと思うと,数学ほど大変な科目は無いでしょう.勉強すべき事項が他の学問の比になりません.そのような物に耐え,貪欲に学習する姿勢こそが「体力」と言えるでしょう(精神的,肉体的と言う点で論理の飛躍がありますが).

では物理学はどうでしょうか.物理学も,ある程度の数学的バックグラウンドを身に付けてからがスタートラインと言う主義なら,同様に「体力」が必要でしょう:「物理は体力だよ.」もちろん心身の健康の維持のために,運動は大事です.もしかすると,身体を動かした方が柔軟な思考が出来るのかもしれません.

最後に

時間があれば物理(もしくはバックグラウンドの数学,以下同様)を勉強しなければならない.物理の勉強が終わったから寝る,朝起きてから物理をやろう,と言う発想ではまだ甘い.物理のことを考えていたらいつの間にか寝ていて,物理のことを考えていたらいつの間にか目が覚める,というレベルでなければいけない.

(自戒も込め)この標語をもって,この駄文を結びたいと思います.

余談

数学やるのは「ドーピング」,つまり物理をやる上で楽になるから,的なモチベーションでしたが,最近は純粋に数学をやるのが楽しいです.